高松高等裁判所 昭和32年(ネ)367号 判決 1960年5月27日
控訴人(附帯被控訴人) 藤井君夫
被控訴人(附帯控訴人) 池内春雄
主文
原判決中控訴人敗訴部分を取消す。
右部分についての被控訴人の請求を棄却する。
本件附帯控訴を棄却する。
被控訴人の当審における新請求(今治市大字別宮二八八番地の二、宅地一四四坪のうち、別紙図面中青線(太線)で囲まれた五二坪三合七勺の地上にある木材等の収去請求。)を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。
事実
控訴(附帯被控訴)代理人は、控訴につき、「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を、附帯控訴につき、「附帯控訴棄却」の判決を求め、被控訴(附帯控訴)代理人は、控訴につき、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を、附帯控訴につき、「原判決中附帯控訴人敗訴部分を取消す。附帯被控訴人は附帯控訴人に対し今治市大字別宮二八八番地の二、宅地一四四坪の内、(1) 四三坪八合(別紙図面中朱線(点線)で囲まれた部分)を、その地上にある杉皮葺板壁平家建工場一棟建坪四三坪八合から退去して明渡し、(2) 五二坪三合七勺(別紙図面中青線(太線)に囲まれた部分)をその地上に置きある木材等を収去して明渡せ。訴訟費用は第一、二審を通じ附帯被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
被控訴(附帯控訴、以下同じ。)代理人は、請求原因として、
(一) 今治市大字別宮二八八番地の二、宅地一四四坪(以下本件宅地という。)は被控訴人の所有に属するものであるが、控訴(附帯被控訴、以下同じ。)人は右宅地の内、四三坪八合(別紙図面中朱線(点線)で囲まれた部分。)の上に建てある訴外稲田文作所有の杉皮葺板壁平家建工場一棟建坪四三坪八合(以下本件建物という。)を昭和三〇年三月三一日右訴外人から賃借してこれに居住し家具製造業を営み且右宅地の内、五二坪三合七勺(別紙図面中青線(太線)で囲まれた部分。)の地上に木材等を置いて木材置場に使用し、もつて右建物敷地四三坪八合及び右木材置場五二坪三合七勺の土地を占有している。
(二) しかしながら、右訴外人は右宅地については、これを占有使用すべき何等の権利なくその上に右建物を所有するものであるから、控訴人の建物居住による敷地(四三坪八合)の占有もまた不法占有であり、更に控訴人は右五二坪三合七勺部分についても何等の権利なくこれを占有しているものであるから、被控訴人は本件宅地所有権に基き、控訴人に対し、前記建物敷地四三坪八合を、右建物から退去して明渡を求めると共に、前記五二坪三合七勺の土地を、同地上の木材等を収去して明渡すことを求める。(原審では、退去を求める建物の建坪を三六坪五合と表示したがこれは建坪の算出を誤算した結果であつて四三坪八合が正しいし、また明渡を求める土地を約八五坪と表示したがこれも坪数の見積りを誤つたためであつて前記の如く建物敷地四三坪八合、木材置場五二坪三合七勺、合計九六坪一合七勺が正しいので、そのように訂正する。)
と述べ、
控訴人の抗弁に対する答弁として、
被控訴人が訴外稲田文作に対し、本件宅地一四四坪を建物所有の目的で賃貸し、これに基き同訴外人が本件建物を建築したことは認める。と述べ、
再抗弁として、
右宅地の賃貸借は次の理由により消滅したものである。すなわち、
(1) 元来本件宅地には被控訴人所有の工場があつたが戦時中空襲により焼失した。右宅地は早晩工場再建のため被控訴人にとつて必要な土地であつたが、終戦直後で混乱した世情のもとで事業再開の見透しもつかないでいるうち、偶々右訴外人の懇請にあい、昭和二一年八月一日一時使用のために同人に賃貸したものである。尤も、その際賃貸期間は一〇年と定めたけれども、右は一時使用期間の最長期を定めたものであり、一時使用でなければ被控訴人においても賃貸の意思なく、同訴外人においても被控訴人の右のような意思を知つて賃借したものである。そして、被控訴人は右期間満了前である昭和三〇年八月一日、同訴外人に対し約定期限である昭和三一年七月末日限り明渡すべきことを申入れたから、右期限到来と共に賃貸借は終了したものである。
(2) 仮に、右賃貸借が一時使用のためのものと認められないとしても、右訴外人は昭和三〇年三月以降他に移転して本件宅地を自ら使用せず控訴人外数名に間接又は直接に転貸し、また使用目的を著しく変更して賃貸借の信頼関係を著しく裏切つたので、被控訴人は昭和三一年九月一〇日右訴外人を相手方として今治簡易裁判所に本件宅地明渡の調停の申立をなし、もつて契約解除の意思表示をしたから、賃貸借は解除となつた。尤も、右調停申立の結果、右訴外人との間に賃貸借解消に関する調停が成立したけれども、右調停は賃貸借が昭和三一年七月末日限り約定期間の満了により終了したことを確認したものであつて、調停(合意)自体によつて賃貸借が解除されたものではない。と主張し、
控訴人の再々抗弁に対する答弁として、
右調停において、被控訴人は稲田文作から本件建物を買受ける契約をしたが、右売買については、代金全額完済したときに所有権を移転する趣旨の約定があり、未だ代金を完済してないから所有権の移転はない。したがつて控訴人主張のような賃貸借の承継はない。と述べた。
控訴代理人は請求原因に対する答弁として、
被控訴人の請求原因(一)の事実は認めると述べ、
抗弁として、
訴外稲田文作は被控訴人から本件宅地一四四坪を建物所有の目的で賃借し、その上に被控訴人主張の本件建物を建築し、その後控訴人において家具製造工場とするためこれを賃借したもので、控訴人が木材置場として使用している五二坪三合七勺の土地も右建物(工場)利用に必要な範囲内の土地である(いわば、右建物利用のためこれに附属した土地である。)から、建物賃借人たる控訴人は当然その使用権を有する。と述べ、
被控訴人の再抗弁に対する答弁として、
被控訴人と稲田文作との間の賃貸借は調停(合意)によつて解除となつたものである。しかしながら、控訴人は右調停に関与していないから、これに拘束されるいわれはない。と述べ、
再々抗弁として、
仮りに、被控訴人主張のように、稲田文作の本件宅地の賃借権が調停によらずしてその以前に消滅し、或は調停による合意解除が控訴人に対し効力を有するとしても、右調停により被控訴人は稲田文作から本件建物を買受けたのであるから、被控訴人は本件建物の賃貸人たる地位を稲田文作より承継したわけである。したがつて控訴人は右建物賃借権を被控訴人に対抗できるから、本訴請求は失当である。と述べ、
更に、控訴人の主張がすべて理由がないとしても、控訴人は本件建物を家具製造工場としてこれに多額の資金を投じ現にこれを使用し営業している者であるから、何等の補償もなく退去せよというのは権利の濫用であつて許されない。と述べた。
証拠として、被控訴代理人は、甲第一号証の一、二、第二号証を提出し、原審における被控訴本人訊問の結果を援用し、乙号各証の成立を認め、控訴代理人は乙第一、第二号証を提出し、原審における控訴人本人訊問の結果を援用し、甲号各証の成立を認めた。
理由
(一) 訴外稲田文作が被控訴人から被控訴人所有の本件宅地を建物所有の目的で賃借し、右宅地の内四三坪八合(別紙図面中朱線(点線)で囲まれた部分。)の上に本件建物を建築所有していたが、そのうち昭和三〇年三月三一日稲田文作は控訴人に対し右建物を賃貸し、それ以来控訴人が右建物に居住し家具製造業を営んでいること並に控訴人が右建物を占有するほか、本件宅地の内五二坪三合七勺(別紙図面中青線(太線)で囲まれた部分。)の地上に木材等を置いて、此処を木材置場として占有使用していることは、当事者間に争いのないところ、成立に争いのない甲第二号証及び乙第二号証、原審における控訴人本人訊問の結果並に弁論の全趣旨を綜合すると控訴人は本件建物を居宅兼家具製造工場として使用し且右建物の南側に隣接する空地即ち右五二坪三合七勺の部分をも利用して、此処で家具製造業を営む目的で稲田文作との間に本件建物の賃貸借契約を締結して右建物を賃借し、右空地部分に家具の製造材料である木材等を置いてこれを木材置場として右営業のために利用しているものであることを認めることができるから、如上事実に徴すれば控訴人の右五二坪三合七勺部分の土地の使用は本件賃借建物の利用に必要な限度内での附属土地の使用であるというべきであり、したがつて反対の特約の認められない本件では控訴人の木材置場としての空地使用は建物賃借権に当然附随すると考うべき附属土地使用権の範囲内の行為である。
(二) そして前段説示の事実によれば、稲田文作の本件宅地に対する賃借権が存続する限り、控訴人の本件建物占有による敷地(前記四三坪八合)の占有及び木材置場としての土地(前記五二坪三合七勺)の占有はいずれも、被控訴人に対しても対抗しうる適法な占有であるというべきところ、被控訴人は稲田文作の本件宅地に対する賃借権は消滅したと主張するので、右主張につき検討する。
(1) 先づ、被控訴人は稲田文作の右賃借権は昭和三一年七月末日限り賃借期間の満了により消滅したというのであるが、成立に争いのない甲第二号証及び乙第二号証、原審における被控訴人本人訊問の結果並に弁論の全趣旨を綜合すると、被控訴人は終戦前本件宅地に工場を建てて鉄工業を営んでいたが戦災のため工場が焼失し、終戦後工場再建を意図していたもののその見透しがたたないでいる矢先、稲田文作の懇請により昭和二一年八月一日、賃貸期間一〇年と定めて同人に本件宅地を製材所用地として賃貸し、同人はここに製材工場として本件建物を建築し製材業を営んでいたが、右約定期間の満了前である昭和三〇年三月三一日右建物を控訴人に賃貸して他に移転したことを認めることができるが、右の事実から本件宅地の賃貸借が借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」であると認めることはできず、(約定期間の満了前、賃借人が居住を他に移したからといつて一時使用のためであると認めなければならないわけのものではない。)他に右賃貸借をもつて一時使用の賃貸借と認むべき資料は存しないから、右賃貸借には借地法の適用があるといわなければならない。さすれば一〇年の約定期間によつて稲田文作の賃借権が消滅するいわれはなく、未だ法定の賃借期間内であるといわなければならない。(借地法第二条)尤も、前出甲第二号証(調停調書)によると、申立人を被控訴人、相手方を稲田文作、利害関係人を黒川米子、浜田アイ子とする今治簡易裁判所昭和三一年(ユ)第三五号建物収去土地明渡調停事件につき、昭和三一年一二月一三日右裁判所において成立した調停の条項には、「申立人及び相手方双方は本件今治市大字別宮二八八番地の二、宅地百四十四坪に対する賃貸借契約が昭和三十一年七月三一日限り解除消滅したことを認めること。」なる一項があり、右に解除消滅したという日時は恰度賃貸借の約定期間一〇年の満了日に該当するから、右条項は被控訴人と稲田は互に右賃貸借が約定期間の満了によつて終了したことを確認するという趣旨に解しうるが、すでに見たように右賃貸借が一時使用のための賃貸借でなく従つて借地法の適用をまぬかれない賃貸借である以上、契約当事者が一〇年の約定期間の満了により賃貸借が終了したものと相互に認める旨の合意をしたからといつて、右賃貸借の性質が遡つて借地法の適用のない賃貸借に変化する道理はないから、右のような調停(合意)が成立しても、右賃貸借が調停前の昭和三一年七月三一日に約定期間の満了により終了したものとは言えないこと明らかである。ただ、右のような調停が成立した以上は、被控訴人と稲田文作との間の本件宅地の賃貸借契約は右調停期日たる昭和三一年一二月一三日に合意解除により消滅したものと認めなければならないことも勿論である。
(2) 次に、被控訴人は稲田文作に賃貸借の信頼関係を著しく裏切る行為があつたので契約解除の意思表示をしたというが、稲田文作が昭和三〇年三月賃借地上の自己所有建物(本件建物)を控訴人に賃貸して他に転居したことは前認定のとおりであるが、このことをもつて被控訴人主張のように土地賃貸借に関する信頼関係を著しく裏切つたものといえないことはいうまでもないし、また被控訴人主張の如く同人が賃借土地の使用目的を著しく変更し或は控訴人外数名の者にこれを転貸した事実は、これを認めるに足る証拠がない。(既に説示したように稲田文作は控訴人に対しては本件建物を賃貸したし、また、前出甲第二号証によると稲田は本件宅地上にある自己所有の居宅即ち本件建物の南側に隣接して建つている家屋を訴外黒川米子、浜田アイ子の両名に賃貸していた事実が認められるけれども、本件宅地を転貸した事実は認められない。尤も前出甲第一号証の一、(調停申立書)には、稲田が大正通りに面した土地約四坪を黒川吉之助に転貸した旨が記載されてはいるが、右は調停申立に際しての被控訴人の主張を記載したものに過ぎないから、右主張をうかがうべき他の証拠のない本件では、右主張どおりの事実を認定することは躊躇せざるをえないのみならず、かりに右が真実であつたとしても本件宅地一四四坪のうちの約四坪の転貸があつたからといつて、ただそれだけで直ちに信頼関係を著しく裏切る行為があつたと認めることは妥当でない。)してみれば、不信行為を理由とする被控訴人の契約解除の主張も理由がない。
(3) ところで、既に見てきたように本件宅地の賃貸借は調停により合意解除されたものであるところ、被控訴人は右調停の性質につき、右は単に約定期間満了による賃貸借の消滅を確認したものに過ぎず、調停自体で合意解除したものではないと主張するが、右主張のうちには約定期間満了による賃借権消滅の主張が理由のない場合の予備的の合意解除の主張を含むものと解しうるので、この点につき考えてみるのに、一般に土地の賃貸借が賃貸人と賃借人との間で合意解除されても、右の土地賃貸借或は土地賃借人と同人から同地上の所有建物を賃借している建物賃借人との間の建物賃貸借が一時使用のためのものであるとかその他特段の事情のない限り、土地賃貸人は右合意解除の効果を建物賃借人に対抗できないものと解するのが相当である。なぜならば、土地賃貸人と建物賃借人との間には直接契約上の法律関係は無く、建物賃借人の敷地(建物固有の敷地のみならず建物利用に必要な範囲内の土地を含む。)の占有使用は建物所有者(建物賃貸人)が土地賃借人として有する借地権に依存するものではあるけれども、建物の所有を目的とする土地の賃貸借においては、土地賃借人が借地上に建物を建築所有し自らこれに居住することのみならず他に右建物を賃貸し建物賃借人をして敷地を占有使用させることも、反対の特約なき限り土地賃貸人において当然予想し且承認しているものと見るべきが一般であるから、その後に至り土地賃貸人は土地賃借人(建物賃貸人)との合意だけで任意に借地権を消滅させることによつて(このこと自体は差支ないが。)その効果を直ちに建物賃借人に主張し建物賃借人が従前土地賃貸人に対抗し得た敷地の占有使用権を奪い去ることは、建物賃借人の敷地の占有使用権の根拠である建物賃貸人の借地権自体が一時使用のために設定されたものであるとか或は建物賃借権が一時使用のため設定されたものであるとかその他特段の事情があつて建物賃借権を左程保護する必要のない場合を除くほかは、信義則上許されないものと解すべきだからである。しかるところ、本件において右のような特段の事情のあることは被控訴人の論証しないところであるから本件宅地の賃貸借が稲田文作との間で調停により合意解除されたという被控訴人の予備的主張も本訴請求をして理由あらしめるには足らない。(つまり被控訴人と稲田文作との間の本件宅地についての賃貸借関係は調停により合意解除されて終了したものの、右は被控訴人と稲田文作との間でのことに属し、控訴人に対する関係においては右賃貸借関係は存続しているものである。換言すれば右賃貸借は控訴人の建物賃借権の根拠を失わしめない限度で且その限度においてのみ存続しているものと解すべきである。)
(三) 以上判断したところによつて、被控訴人の本訴請求は既に理由がないわけであるが、仮りに、被控訴人が本件宅地賃貸借の調停による合意解除の効果を控訴人に対抗しうるものとしても、被控訴人の本訴請求の失当であることを、ついでながら次に附言しておく。すなわち、前記調停により被控訴人は稲田文作から本件建物を買受ける契約が成立したことは当事者間に争いなきところ、前出甲第二号証及び原審における被控訴人本人訊問の結果によると、右売買契約においては本件建物の所有権は被控訴人が代金全額支払つたときに移転する旨の約定がなされていたが、被控訴人は未だ代金を支払つていないことが認められるから本件建物の所有権は依然稲田文作にあること明らかであり、したがつて被控訴人は未だ本件建物の賃貸人たる地位はこれを承継していないものといわざるをえない。そして、一方稲田文作の賃借権は消滅しているわけである。しかしながら、被控訴人としては稲田文作に対し同人の賃借権の消滅の故をもつて本件建物を収去し土地を明渡すべきことを請求しえないことも明らかである。(このことは右売買契約の成立している以上当然であり、該契約成立以後被控訴人が建物所有権を取得するまでの間は稲田文作は敷地を建物所有のため使用しうる筈であつて、いわば使用貸借契約が暗默に成立したものと見るべきである。)そして被控訴人が稲田文作に対し建物収去土地明渡を請求することができない以上、同人より右建物を賃借している控訴人に対しても建物から退去し敷地を明渡すべきこと請求しえないものと解しなければならないからである。
(四) 如上説示のとおりであるから、被控訴人の本訴請求は棄却さるべきものである。
なお、被控訴人の原審における請求の趣旨は、控訴人は被控訴人に対し本件宅地一四四坪の内約八五坪を、その地上にある杉皮葺板壁平家建工場一棟建坪三六坪五合から退去して明渡せ、というにあり、当審においてはこれを、控訴人は被控訴人に対し、本件宅地一四四坪の内(1) 四三坪八合(別紙図面中朱線(点線)で囲まれた部分)をその地上にある杉皮葺板壁平家建工場一棟建坪四三坪八合から退去して明渡し、(2) 五二坪三合七勺(別紙図面中青線(太線)で囲まれた部分)をその地上に置きある木材等を収去して明渡せ、と改めたものであるが、被控訴人の主張する如く、退去を求める建物及び明渡を求める土地はいずれも原、当審を通じて同一であつてその間に変更なく原審では単に坪数の誤算に基きその表示を誤つたに過ぎないことは弁論の全趣旨に照し認めうるから、木材等の収去請求の部分のみが当審における新請求の追加であつて、その余は原、当審を通じ請求は同一であり減縮ないし拡張は存しないものと解すべきである。
されば、被控訴人の請求を一部認容した原判決は失当であつて本件控訴は理由があるから右認容部分はこれを取消し右部分に関する被控訴人の請求を棄却すべく、また原判決中被控訴人の請求を排斥した部分は正当であつて本件附帯控訴は理由がないからこれを棄却すべく、更に当審における被控訴人の新請求も失当であるからこれを棄却すべきである。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 石丸友二郎 安芸修 荻田健治郎)
図<省略>